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2025年3月31日 (月)

夢を結晶させた建築  ホテル川久

夢を結晶させた建築  ホテル川久

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和歌山・南紀白浜に建つホテル川久。

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初めて目にしたとき、その姿は周囲の風景から浮き上がるようで、少なからず戸惑いを覚えた。

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海辺のリゾートに想像する軽やかさとは異なり、
そこに現れるのは、城のようでもあり、異国の宮殿のようでもある巨大な建築だ。

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この建物を設計したのは、建築家・永田祐三。

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1980年代後半、いわゆるバブル期に構想された川久は、
当時の日本が持っていた経済的な勢いと、「本物をつくる」という強い意志を、
そのまま建築として結晶させた存在でもある。

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規模、素材、意匠、そのすべてが妥協なく積み重ねられている。

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館内に足を踏み入れると、まず迎えるのが金箔天井のエントランスホールだ。

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圧倒的な装飾性を持ちながら、不思議と下品さは感じない。
ここでは日常の尺度が一度解体され、別の時間軸へと誘われる。

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大理石、ステンドグラス、重厚な柱や壁面装飾。それらは単なる贅沢ではなく、
「非日常」を成立させるための装置として丁寧に配置されている。

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西洋の古典様式やイスラム的なモチーフ、日本的感覚までもが混在する空間構成は、
一見すると折衷的だが、全体としては強い統一感を保っている。

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合理性や効率とは異なる価値軸で組み立てられた建築だからこそ、
今の時代に見ると新鮮に映る。

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巨大なスケールを持ちながら、館内には視線の抜けや光の溜まりが巧みに設えられ、
人を過度に圧迫しない。

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豪奢でありながら、どこか静かで、わずかな孤独を含んだ空気。

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その複雑な表情こそが、ホテル川久という建築の奥行きなのだと思う。

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時代の評価は変わっても、建築が放つ力は消えない。

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ホテル川久は、過去の夢の象徴であると同時に、
今なお問いを投げかけ続ける建築だった。

2025.03.29
和歌山 ホテル川久 / 1993年村野藤吾賞

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